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【VG2020】〈DMG MORI GLOBAL ONE〉 白石康次郎

ヴァンデグローブ(VendéeGlobe 2020-2021)参加艇紹介。
今回は、唯一の日本艇〈DMG MORI GLOBAL ONE〉の白石康次郎。53歳。

© Thomas DEREGNIEAUX、© Mathieu LAVENU

この人と会って思ったのは、稀代の人たらしなんじゃなかろうかということ。
悪い意味ではないですよ。人なつっこくて、話が上手くて、会えばまずファンになっちゃう。応援したくなっちゃう。そんな人です。

フルクルー艇にはオーナーがいてオーナーの元にチームができているけれど、ショートハンド艇種は自分でヨットを買うところから始めなければならず。つまり、プロレーサーとしてやっていくには、まずはスポンサー探しからってことになります。

今回DMG森精機というタイトルスポンサーが付いたことで、8億円の新艇を駆っての「ヴァンデグローブ」2度目の参戦となった白石康次郎ですが、その前から数多くのスポンサーが付いておりました。DMG森精機に比べると “小口” のスポンサーってことになってしまうけど。数多くの “小口” の優良スポンサーを募ってくることで、プロ外洋レーサーとしてやってこれたわけで。

© Thomas DEREGNIEAUX

10月29日。DMG森精機の仕切りで「DMG MORI SAILING TEAM Vendée Globe 2020-2021 白石康次郎 壮行会」が開催されました。
僕もZOOMで参加させていただいたんですが、この会はそうした古くからの “小口スポンサー” さまへの白石康次郎からのお礼の会だったんじゃないかと思うのです。

彼らスポンサーは、おそらく誰1人として宣伝効果なんて考えて無いはず。白石康次郎を応援したいから。「コーチャン頑張って!」という一念なんだと思う。

僕はジャーナリストとして冷静に見なきゃいけないんだろうけど、なんか見てるとですね、こっちだってね、「ああ、お酒はやっぱり八海山にしよ。」と思っちゃうんですよ、やっぱり。
そのくらい、人たらしなのですよ。白石康次郎という人は。

1人乗り外洋系

白石が師事した多田雄幸は、自作のヨットで第1回の「The BOC Challenge 1982–1983」に出場し、みごと優勝。
「The BOC Challenge」は、同じ1人乗り世界一周レースでも、寄港型。いくつかのステージに分けて世界を一周するstage raceとも呼ばれるスタイルです。
BOCはスポンサー名で、その後、「The Around Alone」「The Velux 5 Oceans」と名称が変わるのでヤヤコシイのですが、「The Velux 5 Oceans 2010-2011」を最後に今は開催されていません。

対してこちら、同じ1人乗りでも無寄港世界一周の「VendéeGlobeヴァンデグローブ)」は、1989年から始まった後発で、以降ステージレースの「 Around Alone」とは開催年こそかぶらないものの、両方出たら体が持たないって感じの別企画。
これ、寄港型か無寄港かの違いというより、ヴァンデグローブがフレンチ風味なのに対し、「The Around Alone」英米流といったらいいか。初代スポンサーのBOCが英国のガス化学工業で、米国ニューポート発着で。と、同じセーリング競技でも文化が違う感じ。で、フレンチが生き残った、と。


白石の師である多田雄幸は、第3回となる「The BOC Challenge 1990–1991」の寄港地で自殺します。

いったい何があったのか、僕自身は80年代からすでにフルクルー畑の村で生活していたので、1人乗り外洋系の事情はさっぱりわかりません。同じ外洋ヨットでも、隣の畑どころか農業と漁業くらいの違いがあり、フルクルー畑の自分にとって1人乗り界はマイナーなイメージだったんです。が、実際は堀江謙一の時代から、1人乗り長距離系のほうが一般的にはメジャーなのかもしれません。ヨットとして。

で、白石康次郎は亡き師匠、多田雄幸の後を継いで1人乗り長距離系の道をそのまま突き進みます。
1994年、26歳のときに1人乗り無寄港世界一周を達成。レースじゃないですが、当時の最年少記録です。
さらに、
「The Around Alone, 2002-2003」にIMOCA Open40クラスで出て、2位。
「The Velux 5 Oceans 2006–2007」ではOpen60クラスで2位。参加艇はわずか7艇ですが、4位はあのSir Robin Knox-Johnstonですよ。〈Hugo Boss〉のAlex Thomsonも出てますね。第1レグで遭難してます。

Dramatic account of how Mike Golding rescued Alex Thomson in the Southern Ocean
Tom Cunliffe nominates this spinechilling account by Mike Golding of how he rescued Alex Thomson from his stricken Hugo Boss during the 2006 Velux 6 Oceans

そしてちょっと間が空いて、前回の「ヴァンデグローブ 2016-2017」に日本人として初めて出場。大西洋を南下し終わったあたりでマストが折れてリタイア。残念。となったわけです。

第9世代のIMOCA60は、

今回、白石康次郎が乗る〈DMG MORI GLOBAL ONE〉は、2019年9月5日進水。最新の第3.5世代……って前回書いちゃったんだけど、毎回世代交代した新艇が出ているわけで、今の最新艇は第9世代と表現した方がいいのかも。で、第4世代で飛躍的な進化(カンティングキール+ダガーボード)を遂げ、第8世代でフォイル艇が現れた、と。

で、第9世代の〈DMG MORI GLOBAL ONE〉は……
Jérémie Beyouの〈CHARAL〉と同じVPLPデザインのモールドから建造。あちらはフランスLA FORÊTのCDK Technologiesで建造。こちらは同じフランスでもMultiplastで建造。〈CHARAL〉と比べると、フォイルの大きさ、形状がだいぶ違います。この写真からまた改良されているかもしれませんが。

どんなフォイルがどうすごいのか、は、まだよく解らないので、ここで注目したいのがやはりコクピット。

© Thomas DEREGNIEAUX

第9世代艇ではコクピットが完全に被われてキャビンのようになったタイプも出ていますが、〈DMG MORI GLOBAL ONE〉のコクピットもかなり後ろまで被われてはいますが、基本的にはオープンで、ドジャーが長く伸びたオーソドックスなスタイルです。船酔いするので、なるべくデッキに出て艇や周囲をチェックしたいんだそうな。
グラインダーを回すときは頭があたらず、立てば顔が出るという絶妙な高さが使い勝手良さそう。

横の窓はなんとなくゼロ戦のコクピットって感じ。このあたりの形状は、各艇バリエーションが多いです。が、後ろからザブザブ波をかぶっているのが見えます。

苦しいときはビデオを拝む

壮行会では、各スポンサーからのビデオメッセージを繋いだ動画が流されましたが、「これ気に入ったのでください。ヨットに積み込んで、苦しいときはこれ見て元気つけます」と泣かせることを言うコージロー。
以降本サイト内の記事では、親しみを込めて “コージロー” と記載することにします。

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