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【VG2020】〈PRB〉Kevin Escoffier

ヴァンデグローブ(VendéeGlobe 2020-2021)参加艇紹介。
〈CHARAL〉のジェレミ・ベユー(44歳♂仏)に続いては、〈LINKEDOUT〉のトマ・ルイヤン(38歳♂仏)あたりを紹介するのが順当なんでしょうが。ここはあえて、〈PRB〉のKevin Escoffier(40歳♂仏)を推してみたいと思うんです。
なんでか、

© Jean-Marie Liot / PRB、© Eloi Stichelbaut / Polaryse

強豪〈PRB〉チームの歴史

まず、なんといっても〈PRB〉は歴史ある強豪チームである、ということ。
スポンサーのPRBは、ペンキを中心とした建材メーカーのもよう。

https://www.prb.fr/en/

今を去ること20年前。第4回の「ヴァンデグローブ 2000-2001」では、Michel Desjoyeaux(ミッシェル・デジワイオ)が乗って優勝。この方、ショートハンド外洋レース界にあっては、古今亭 志ん朝なみの重鎮です。

次の「VG 2004-2005」からは、乗り手をVincent Riou(仏)に替え、これまた優勝。
Vincent Riouは1972年1月9日生まれですから、スタート時点では32歳。「VG 2000-2001」の時点でも〈PRB〉の準備作業に加わっていたというから、チーム生え抜きって感じ。

Mon Vendée Globe : Vincent Riou

こちら2017年のVincent Riou。フランス語なんで何しゃべっているのか分からないのですが、Michel Desjoyeauxと長く仕事をした……みたいなこと言ってるようです。話しぶりからすると、なんだか学者肌の落ち着いた人ってイメージ。
その次の「VG 2008-2009」〈PRB〉で出場し3位。これは他艇を救助するためリタイアしての特別3位なので、そのあたりは後ほど詳しく。
で、この年、Michel Desjoyeauxも出てて〈Foncia〉で優勝しています。1965年7月16日生まれですから、43歳かぁ。
「ヴァンデグローブ」で2度優勝したのはMichel Desjoyeauxだけです。やっぱ、志ん朝級の重鎮と呼んでよろしいかと。

で、Vincent Riouの方は〈PRB〉で新艇を建造して挑んだ「VG 2012-2013」は、マストを支えるアウトリガーを壊してリタイヤ。
次の「VG 2016-2017」も同じ艇で。これは、フォイル艇が台頭する中、旧式のダガーボード艇でガマン……というより “ダガーボード艇の方が良いのだ” と宣言して挑んでます。
実際良い走りで、首位を伺う好位置につけたまま大西洋南下レグを走り抜き、最後の最後にUFO(Unknown Floating Objects:未確認の浮遊物)がキールに当たりリタイヤしています。残念。

伝統の一門が選んだ男

と、伝統の強豪〈PRB〉チーム。Vincent Riouの後釜に抜擢されたのが、こちらKevin Escoffier(ケビン・エスコフィ)。フランス人が発音するとエスコフィシエって感じか? 難しいので、Escoffierでいきます。40歳のフランス人です。

「ヴァンデグローブ」はこれが初出場ですが、2012年には全長120ftのマキシ・トリマラン〈Banque Populaire V〉がスキッパーLoick Peyronの元でジュールベルヌ・トロフィー(Trophée Jules Verne)を獲得したときにクルーとして乗っています。

その後、フルクルー寄港型世界一周の「ボルボ・オーシャンレース 2014-2015」「同 2016-2017」で「東風」(Dongfeng)に乗ってます。ということは、前回ご紹介した〈CHARAL〉のJérémie Beyouとも、「VOR 2016-2017」で一緒に乗って優勝したということになりますね。

正確にいうと、第3レグでJérémie Beyouが降りて代わりに控えだったKevin Escoffierが乗り。第4レグからはJérémie Beyouも復帰してそこから一緒ということ。

そういえば、一門の重鎮Michel Desjoyeaux(ミッシェル・デジワイオ)さんも「ボルボオーシャンレース」に出てたな……と思ったらスペイン艇〈Mapfre〉だった。その前も……〈La Poste〉、〈Charles Jourdan〉、〈Cote d’Or〉と、「ボルボ・オーシャンレース」が「ウィットブレット世界一周レース」だった頃から出ています。やっぱ志ん朝クラスだな。

フルクルーのレースでは経験豊富な先輩セーラーから直接艇上で学ぶことも多く、そこではプレッシャーもあるでしょうし、外洋セーラーとしてのキャリア構築には利点が多いのです。

© Jean-Marie Liot / PRB

さて、今回Kevin Escoffierが乗る艇は、Vincent Riouが「VG 2012-2013」用に造った艇で、2010年3月進水のVPLP-Verdierデザイン。ということは3世代か4世代前の設計ということになりますが、2017年にフォイル艇に改造しています。

改造の成果はどんなもんかというと、
「ヴァンデグローブ 2020-2021」の前哨戦ともいえる「Vendée-Arctique レース」(2020/7/4スタート)では、先に挙げた〈LINKEDOUT〉(2019/9/3進水)、〈APIVIA〉(2019/8/5進水)、〈CHARAL〉(2018/8/18進水)ら最新艇群と互角に走ってました。

A bord en entraînement | Kevin Escoffier PRB

途中、メインセールを壊して後退しましたが、しっかりリカバリーして再び追い上げ、最終的には5位に入ってます。どうも、後半はモードを変えて完走めざしたようにも見え……。
と、改造によって最新デザイン艇と互角に走っていると筆者はみます。

伝統のチームが伝統の艇を改造し、歴戦の外洋レーサーを擁しての新たな挑戦。
ね、イケそうでしょ、今年の〈PRB〉も。

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